説明責任という厄介なもの
個人投資家にはこういうものがない。したがって、一番自由に自在に自分の流儀に従って儲けられるのだ。したがって個人投資家が一番優位なはずだ。
例えば重い説明責任を持つGPIFを例にとろう。GPIFは公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人であるから、国民全体に対する、年金受給者全員に対する説明責任を持つ。これについて実は筆者はあまり関心がないことではあるが、日経ヴェリタスの編集委員が記名入り記事で1ページを費やして論じているので要約して紹介する。
GPIFの運用受注機関名が1社削除されたのだそうだ。理由はノーコメントだという。隠さなければいけない理由があるのだろうか。日経ヴェリタス誌のことで何故運用を打ち切られたのかを打ち切られた側にコメントを求めても「GPIFとの間に守秘義務があるから話せない」と言ったそうだ。運用受託機関から削除されたのは港区に本社を持つセイリュウであり、セイリュウは実際の運用は同社が米国に本社があるタイヨウ・パシフィック・パートナーズに再委託しているのだという。GPIFは18年8月23日をもってセイリュウから資金を引き揚げたという。途中で資金を引き揚げた理由も運用成績の低迷ではなさそうだ。何か理由があるのかと詮索されたら(筆者には興味がないことではあるが)説明しなければならない責任がある。個人投資家にはこういうものは一切ない。どこそこの証券会社と取引を止めたなどということを他人に説明する必要はない。また、どこそこの証券会社に口座を開いたということも他人に説明する義務もない。したがって個人投資家が一番強いはずなのだ。会議も開く必要もない、レポートを書く必要もない、誰に説明する責任もない。自在に自分の流儀でやれるはずなのだ。
読者諸賢に呼びかけたい。以上のことを自覚しながら近い将来、大きな好機をつかんで証券市場から時価総額の何百万分の一でいいから自分のものとしてとってこようではないか。ちなみに100万分の1で約6億円弱となる。誰にも遠慮はいらない。普通のシャバでは「あいつは勘定高い狡猾な男だ」と言われるような行動でも、株式市場では(法律と契約を守ってさえいれば)「彼はハシコイ仕事をするスマートガイ(「切れる奴」という意味の業界用語)だ」と評され、市場から獲ってきた札束には惜しみなく喝采が送られる、証券市場とはこういうところだ。誰にも遠慮はいらない。さあ、今は一足一刀のまざかいを置きながらも、これに対峙しようではないかと呼びかけたい。
【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)市場内部要因の然らしめる先週木曜の大幅高とNY高を受けて週末まで約半年ぶりの4日連騰
(2)8月相場を振り返れば
(3)風化されて行くリスク
(4)来週半ば11日(水)に安倍政権が内閣改造をするという
(5)NY市場と東京市場の罫線上の位置
(6)当面の市況
第2部 中長期の見方
(1)米大統領対FRBの対立
(2)製造業、6年ぶりに借入金比率が上昇
(3)今年は欧州に激震が走る
(4)欧州波乱の可能性
(5)「カネ余りのバブル相場に流されるな!」
(6)首脳の共同宣言が成立しないような首脳会談は意味がないか、そうは思わない
(7)何らかの理由で資金循環が止まったらどうなるか
(8)「さわかみファンド」設定から20年、長期投資に寄与
(9)説明責任という厄介なもの
(10)「かんぽの闇、金融商品の罠」
(11)「ポスト・グローバリズム」とでも言うべきもの
第3部 「平成の期間は敗北の時代だった」のか?「平成の期間は敗北の時代だった」のか?日米中の動向も併せて考える
①経済力の相対的弱体化。
②平成時代は政治不作為時代が長かった。
③中国を国際社会の仲間に入れ、アメリカを追尾する国にのし上がらせたのは平成初期の日本の仕業によるところが大きい。
第4部 読者との交信
読者Tさんとの「2019年初めの2万円割れが大底だったという可能性は無いのか」に関する交信(9月5日)
【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。
なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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