消費増税の強行に注意したい
消費増税は今まで3回行った。0%から3%にしたのはバブルの真っ最中だった。3%から5%にしたのも好景気の時だった。また、5%から8%にしたのも2014年の1月であり、アベノミクスの壮年期相場の時だった。にもかかわらず三度とも四半期ごとのGDPは下降し、日経平均株価も一旦は下がった。ましてや4度目の10月1日の10%への増税は戦後最長景気で、それが終焉を迎えている(少なくとも景気動向指数で言えばそうなる。政治家の意図の入った公式見解である月例経済報告で言えば「緩やかな回復を続けている」ということになっているが、客観的な29系列の指標で表される統計で言えば明らかに後退局面に入っている。この時点での増税は経済を破壊する恐れもある。
また、米国の利下げは株価上昇要因として短期的に受け止められているが、本格的には後退局面でそれを防ぐための利下げならば、むしろ株は本質的には売られるものである。これが理屈である。
しかし理屈はともかく、そこに現存するものは相場なのだ。「罫線に向って理屈を言うな」「罫線に向ってモノを言うな」ということを筆者は京大出身の理論家の先輩から若い頃に聞かされてきた。それを今思い出す。トランプ大統領が大幅利下げを求めているが、それは米国が景気後退局面に直入して、景気後退局面に落下したことが明らかにされた時に正当化される政策である。トランプはこの辺の理屈がまるで判っていない。目先的な高株価政策が実現すれば、それで良しとしている。金融政策のイロハのイも、マクロ経済学のイロハのイも判っていない。ましてや今、日本と欧州主要国に「ポスト・グローバリズム」とでも言うべき現象が起きている。伝統的な理論経済学の金融政策の効き目があるのは、家計も企業もバランスシートが健全である時だけである。ケインズ経済学もこれを前提としてきたが、バランスシートが崩れている時には金融政策では効き目がない。財政政策でこそ初めて効き目が出る。これも「失われた13年」(1990年~2003年)の間に一貫して主張してきたのが野村総研のリチャード・クーと植草一秀であった。前者は今、ポスト・グローバリズムの経済学をバランスシートというミクロの面から着目してマクロ経済学を構成し、「マクロ経済学の残り半分」(The Other Half)として体系付け、これは元FRB議長のバーナンキや元財務長官のサマーズなどの激賞を受け、欧米の中央銀行等からの講演依頼が絶えないという。「『追われる国の経済学』ポスト・グローバリズムの処方箋」(リチャード・クー著、東洋経済新報社、2019年5月刊)に彼の言う「残り半分の経済学」を確立し、620ページの大著ではあるが実に判りやすく著した。これは英語で書かれたものであり、それが逆輸入されたものであるが、その英語版をバーナンキ元議長もイエレン元議長もサマーズ元米財務長官も激賞しているという。
【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)ジャクソンホール会議(★註)のあと、やはりNYは一時大荒れ
(2)ジャクソンホール会議(★註)のパウエル発言、日本時間で先週末の23時。今後はG7に焦点が移動する
(3)逆イールド現象
(4)「相場は相場に訊け」――PCRを見る
(5)8月1日の新月の夜、米国の対中関税第4弾の表明を受けて世界的に急速に株安局面が進んだが……
(6)「2019年10月から12月期は企業収益は増益に転ずる」「したがって株価の下値は堅く、株価の上昇局面が今年末から来年にかけて訪れる」
(7)世界の銀行株が下落
(8)空売り筋の買い戻し、所謂「小型ながら踏み上げ相場」があったが……
(9)GPIFの買い持ちと日銀の買い続けと企業の自社株買いとで「国を挙げて株価操作された日本株」であるが……
第2部 中長期の見方
(1)韓国がGSOMIAを一方的に破棄してきた
(2)中長期のチャートで言えば弱気サイン
(3)「貯蓄から投資へ」が少しずつ効き始めた
(4)ポピュリストとしての手腕をいかんなく発揮しているトランプ
(5)FRBの動向と上値抵抗線を形成してしまったNY相―三尊天井の形成
(6)消費増税の強行に注意したい
(7)中国とドイツの経済指標は大幅な減速を示した
(8)「経済学の残りの半分」(The Other Half)(R・クー)
(9)香港騒動の問題――「読者との交信蘭」で掲載する部分と併読されることをお勧めします
(10)ポピュリズムが世界各国に流行っている背景
(11)野村証券株が立ち直る日は来るか?
第3部 読者との交信
(1)剣道練士(五段)のI様(山﨑註;私は四段で後輩です。四段と五段の差は大きい)との交信。(8月14日)
(2)不動産(株も)は「絶好調の『絶』で売れ」と解かれた不動産コンサルタントHさんとの交信;(着信8月17日、返信20日)
(3)「香港の騒動について」読者 Y様との交信
(4)Hさん(ゼミの友人)との「韓国外交について」の交信
筆者註;韓国がGSOMIAを一方的に破棄する前のメール
Hさんのメールに対するNさん(ゼミの友人)の返信
筆者註;韓国がGSOMIAを一方的に破棄する前のメール
お知らせ
【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。
なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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