市場の主役は夙に変わっていた
売買代金が昨年と打って変わって縮小している。先々週までは6日間連続して2兆円割れとなった。先週も週初の2日間は2兆円割れだった。(先週後半は3日連続の2兆円超だったが、FRB利下げ期待の賞味期限切れとともに来た燃え尽き症候群の大幅下げを含めての話だった)。
これには次のような背景があると思う。
株式市場の買い手の主役交代である。7月末にかけて各国の主要中央銀行の金融政策発表が相次ぐ。「好景気中の利下げ」という「本当はやってはならない利下げ」を期待して、「利下げ=株高」と決め付けて、短期的にでも利益を上げれば良しとするヘッジファンドが短期相場の株高を主導してきた。これが売りに回る一方、ここで債券中心の運用で株式市場から一歩引いていた中長期投資家が大底圏内近しと見て買い時を探り始めるだろうが、彼らはヘッジファンドと違って一挙には買わないし、また順張りの高値追いはしない。
ここで相場付きは夙に全く変わったのだ。それが売買代金の継続的縮小に現れていると見なければならないであろう。
短期ヘッジファンドは6月下旬から先進国株への買いを増やしてきた。米中貿易摩擦の再燃に伴う「好景気中の利下げ」を頼りとしてのことだ。
ECBが9月に利下げをするというし、量的金融緩和の再編も示唆した。ドイツの景況感指数は市場予想を大幅に下回り、金融緩和するという思惑が急浮上した。
FRBもECBもドイツも「過度な緩和」の修正が起きつつある。
30日~31日のFOMCでは0.25%の利下げが実施されたが、利下げ幅が僅かとはいえ、「10年半ぶり」のことだ。リーマンショック以来である。
日銀は金融政策の最高意思決定会議である金融政策決定会合を29~30日に開いて、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度とする長短金利操作(イールドカーブ・ コントロール、YCC)付き量的・質的金融緩和政策の現状維持を賛成多数で決定した。
【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)FRB、10年ぶりの緩和に転じ0.25%利下げを先週31日に発表した
(2)利下げ期待の相場に燃え尽き症候群、トランプに操られている相場付き
(3)市場の主役は夙に変わっていた
(4)15年間で売買代金最少だった7月相場の内容
(5)FRBの利下げと歴代FRB議長の評価
(6)迫られる日銀の試練──苦境に立つ黒田総裁
(7)予防的緩和の節目は105円か
(8)投資マネーは株式市場から逃避して社債に向っている
(9)長保合で「閑散に売りなし」だったが……
(10)FRB・ECBなどの世界的な利下げをはやした株高の賞味期限
(11)利下げ期待相場の燃え尽き症候群
(12)新興市場の低迷
(13)「工業国ニッポン」にとって製造業株の不振は重荷になっている
(14)北朝鮮の動きと彗星の逆行期と高校野球
第2部 中長期の見方
(1)米最長景気に減速懸念とFRBの10年半ぶりの利下げの意味
(2)三たびMMT(Modern Monetary Theory)について
──MMTブームは参院選には登場しなかった
(3)本稿で何回も引用した野村総研R・クー氏の理論、
これが海外中央銀行で講演依頼が絶えないという
(4)ラガルドECB新総裁──「金融関係者に驚きを以て迎えられた」
(5)ユーロ圏も景気減速
(6)先進各国にポピュリズムとナショナリズムが誕生している危険性
(7)FRBは中長期には市場からの信任を小さくする恐れがある
(8)世界最大の機関投資家・日本の年金運用法人GPIF
(9)「米住宅市場に過熱懸念」──これは迂闊に見過ごせない
(10)日本経済の基調は4~6月は大幅に鈍化
(11)中長期の見方:ラジオ日経のアンケートの回答(7月30日返信)
第3部 トルコ中銀4.25%利下げ
[ 来週号に掲載する予定原稿 ]
〇『人生100年時代』を下支え。投信長期にシフト
〇中長期の見方:米外交方針の基本の変化
(米は常に仮想敵を作っての外交だ。仮想敵の変遷は、
→<1>ソ連
→<2>日本
→<3>「悪の枢軸」3か国
→<4>オバマの仮想敵なしの円満外交
→<5>今は中国)
【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。
なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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