投機の流儀 セレクション【vol.132】「だから今REIT」か

「だから今REIT」か

これは日経ヴェリタス紙7月14日号の第1面のトップ記事の大見出しである。
この新聞は旧日経金融新聞であるが、株式市場が活況を呈するとますます景気のいいことを書き、株式市場が下降に転ずると先行き恐慌が来るようなことを書く。商業新聞であるから、売らんかなの意図があることは特に悪辣だとは全く思っていない。当たり前であろう。しかしこれも商業新聞の言い分だということは意識して見ていきたい。この日経ヴェリタスのRIET特集を見ると、やはり11年ぶりの高値に来ているのだから無理もない。

東証REIT指数は小泉政権の既に中頃に1500から2500に急騰したことがあった。その時筆者は、高利回りで買ったものが元本が6割以上も半年で上昇するということは、驚いて喜んで全REITを利食いしてしまったことを覚えている。
そして07年夏だったと思う、夏に3週間ほど蓼科高原で過ごす間に妻の旧友が数人遊びに来てくれたが、彼女らの話題はREITの話題ばかりだった。大体、おばさんたちが夢中になって株の話しばかりしている時は株は天井だ、と昔は言っていたものだ。今そんなことを言ったら性差別だと言って批判されるから誰もそういうことを言う者はいないが、昔は「婦人雑誌に株の記事が出たら間違いなく大天井だ」というのが常識だった。筆者は妻の友人たちがREITの話題に夢中になっているのを見てやはり売っておいてよかったなあと思った。それは指数が1500から上がって2500を突破した頃だった。そしてそこから約3分の1になってしまった。もちろんリーマンショックのあおりを受けたからである。そして2007年の最高値の3分の1以下から2.5分の1ぐらいのところを4年間横這いし、12年のアベノミクス相場始動以来上昇傾向を今日まで続け、先週遂に11年半ぶりの2000の大台を超えた。前掲紙では具体的に阪神阪急REIT(8977)の例を挙げて18年以降所有物件の23件から30件に増やしたとか、資産は1,600円増加したとか数えるとか色々述べて、まるでREIT推奨新聞の観を呈している。

何故今REITが活況なのか、もちろんこれは世界的なカネ余り現象のなせる業であるが、株に行かずにREITに行くというのはまずは利回りであろう。株式利回りは長期国債の220倍(2.2%)であるが、REITの配当利回りが配当3.8%である。そして基本的には家賃収入の配分であるから株式の利回りよりも安心であるという感覚がある。筆者にもあった。
そこで不良債権処理が終了した頃から大底圏内の大通り銘柄を段階的にナンピン買いを始めると同時にREITを購入してきた。そしてREITは株式よりも先に全部利食いしてしまった。もちろん筆者のことだから、利食いした後も大幅に上がる。それは仕方がない。国内では東京都心で大型再開発がなお続きREITの組み入れが相次いでいるという。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)週末2日間の大幅安と大幅高(しかも一日の上下幅は概ね相等しい)
(2)「令和最大の下げ」と、「下げ分を正確に埋めた戻し」とが出た先週
(3)選挙後の株高再現はあるか?
(4)「外交の安倍」と世論と選挙
(5)今後の趨勢、見方は二つに分かれる
(6)諸外国は高い中で、日本株は外需株が弱い
(7)日銀追加緩和、9月に「あり」と見るのは外国為替市場関係者が34%
(8)信託銀行の年金運用は下値支持線と上値抵抗線とを定めていくという役割を果たしている―――個人投資家を市場離れさせる一因だ
(9)「だから今REIT」か
第2部 中長期の見方
(1)「米株高は最後の宴か」または「新しい相場の始まりか」
(2)米金融政策に潜む将来の危険性
(3)日本の最主要輸出国である中国、その国内経済に黄色信号
(4)「持ち合い解消の売り」が出るか
(5)景気減速を表すマイナス現象
(6)原油価格、次は今後どうなるか
第3部 個別銘柄の見方――今回は銀行業とドイツ銀行株
(1)アベノミクス時代の数年かで最も経営環境の厳しかった銀行業、異次元緩和の負の効果が蓄積されてきた
(2)ドイツ銀行株
第4部 「太陽黒点と経済危機」
第5部 読者との交信蘭

【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。

なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。

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