消費増税は再々延期する、その客観的な理由
民間予測では4~6月期のGDPはマイナス成長となる見込みが大きい。以前は四半期別GDPが3回続けてマイナスになった場合は景気は後退局面に来たと定義された。旧経済企画庁が内閣府に統合されてからは客観的判断が曖昧になった。
1~3月のGDPは市場予測がマイナスだったのに対して実際プラスだったが、これは既報で述べた通り内容が実に悪い。
個人消費と設備投資というGDPの二本柱はマイナスであり政府が意図的に操作できる財政出動でプラスにして、輸出は「輸入が大幅マイナスだったから輸出がプラスになった」という形の「悪い形のプラス」であった。そしてその4項目を合計すればプラスになったというだけの話しであり、内容はすこぶる悪い。
市場はそれを知っているからマイナス予想に反してプラス成長のニュースが出た時の一瞬日経平均が180円上がったがすぐにしぼんでしまい翌日は安かった。
実は景気は18年末にはピークを打っているので景気後退局面に入りかけていると見る向きもある。そうなると株は2ヶ月前の10月2日に老年期相場の大天井を突いてやはり先見性を発揮していたことになる。今年は下期にかけて景気の調整色が強まるのではなかろうかと客観的には言えることになる。
消費増税を財政規律の立場から支持する政治家も多くいるので、ホンネは憲法改正のための最後の選挙であるからそれ以外のことで敵をつくりたくない。
したがって、安倍首相は政敵をつくらないためにも消費増税のことは軽々には口にしないであろう。
英国がEU離脱が無秩序離脱となれば、欧州の経済に対するマイナスは大きく、また米中貿易戦争による米中両方のブーメラン現象のマイナスは大きく出る。
この時EU離脱の危機感と米中貿易の摩擦によるマイナスとこの両方のリスクを読めなかったと言われて、増税に踏み切った政権はリスク管理の無能力さを問われることになる。モリカケ問題で恩を売っている財務官僚は、「増税を再々延期したらモリカケ問題をバラすぞ」と言ってきたら、それを抑えるために最高人事権を全て掌握している担当大臣に盟友麻生氏を据えている。麻生氏の存在価値は実にここにこそある。
【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)底入れのシグナルは今は見えないが、下値の模索が付けばいつでも中間反騰はある、それが相場の生理というものだ
(2)今までの下値支持線は、それを割り込めばその線が次の上値抵抗線に変化する、という傾向がある。週末は、下値支持線の2万1000円を割り込んだ、次はこれが上値抵抗線に変化する可能性あり。下値に12月25日の,本稿が「当面の陰の極」と言ってきた、その線を意識することになろう。しかし日経平均の「PBR1倍」は重要なメドとなる
(3)強まる安全志向
(4)6月末に支払われる配当金合計は約7兆円、これはどこへ向かうのか
(5)銅相場は景気動向に先行するという
(6)衆参同日選挙はやる。消費増税は再々延期する
第2部 中長期の見方
(1)GDP四半期別報告に惑わされるな
(2)消費増税は再々延期する、その客観的な理由
(3)米中貿易戦争
(4)「リーマンショック級のことがない限り・・・」と安倍首相は云うが、実は「チャイナリスク」が起きればリーマンショックより甚大である
(5)市場は米中貿易戦争を片時も忘れない――米中の問題は「ロス・ロス」の関係に至る
(6)トランプの計算――「思い付き」ではなく、中国の無礼に対する報復だった
(7)米中貿易戦争は「ウィン・ロス」の関係になるという説
第3部 消費増税延期と衆参同時選挙と政局
(1)政局・政策・消費増税再々延期・米中貿易戦争との関係
(2)「政局を語ると敵をつくるから政局の話しをしない方が賢明だ」というが・・・
(3)米中貿易戦争の先行き――これは、増税はやらない、という格好の説明力となる
(4)「リーマンショック級の事態」を未然に防ぐ義務が政権担当者側にはある
第4部 政策論議と海外諸事情
(1)「悪い経済政策」と「非常に悪い経済政策」のいずれをとるかの問題
(2)「第1の矢」の効果は甚大だったが、「2%目標」には「矢折れて弾尽きた日銀」
(3)「日銀の異次元緩和」、この先どうする
(4)米中文明の衝突論は良くない
(5)中国経済の裏面
第5部 読者との交信
神奈川の一読者との「スルガ銀行株への長期的投資」についての交信(5月19日)
編集の手違いから先週号への掲載をしなかったので今週号に掲載する。質問者本人に対しては5月19日付で返信している。
(1)筆者からの返信(質問者への返信は19日)。
(2)スルガ銀行株に関する交信(5月19日)への追伸
【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。
なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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