投機の流儀 セレクション【vol.125】株価は景気に先行する。その景気は6年ぶりに「悪化」して「後退局面」に入ることがほぼ確実視された

株価は景気に先行する。その景気は6年ぶりに「悪化」して「後退局面」に入ることがほぼ確実視された

13日に内閣経済社会総合研究所(旧経済企画庁)が発表した景気動向指数29系列の経済指標から加工統計した客観的な数値(★註)が「悪化」となると景気後退局面に入る可能性が高い。
商流・物流を巡る米中対立が深まれば→円高→株安→資産価格の下落が消費を減らす→GDPの6割を占める消費はGDPを減らす→景気後退、と言う経路をたどる可能性が強い。去年の10月2日を、老年期相場の大天井としてそれ以降約5,500円下がってそこから約3,000円上がったが、本稿では当初からこれを中間反騰だと見ていた。景気動向指数が「悪化」としたのは12年10月から13年1月であり、今回は6年ぶりである。もちろんアベノミクス相場は景気が悪化に入った12年11月の中で景気に先行した始動した。

アベノミクス政策が本格化して「第一の矢」が放たれた13年春以降では初めての「悪化』である。この景気指数低下の主因は、当然、中国経済の減速を受けた生産鈍化である。輸出減速で生産が低下して工作機械が特に低下し、これは7ヶ月連続で前年割れを演じた。当然、悪化をきたす。これはむしろ総理府の発表を前に予感されていたことではあり、本稿でも今年の春で史上最長となる景気はそろそろ「お疲れさん」の時期に入るということは何ヶ月も前から述べてきた。
(★註)1960年創設。その後何回か改変され、その後、客観的な立場にある外部の学者7人から構成される景気動向指数研究会によって改革されて今日に至り、つとにIMFやOECDから世界一流の指数であることが認定されている)。

日本経済の強みはものづくりにあったし今でもそうだと思う。ところが、その製造業を中心に設備投資を先送りする動きが強まった。設備投資の1月~3月期の見通しは前期比で▼1.8%となる模様である。その他にGDPの60%を占める個人消費は、暖冬による衣類の販売不振や一部の食品値上げなどを受けたこと、また資産価格の下落による心理的要因、などなどによって消費者心理の悪化が下押しすると見られる。10連休は消費を盛り上げたことは事実であろうが一過性のものであろう。先週26日に月例経済報告があった。景気の総合判断評する文言を下方修正するという見方が強まっていたが、4月までは「緩やかに回復」と謳っていた。ところで、4月も「このところ輸出や生産の一部に弱さも見られる」と逃げ道をつくっていた。この辺のところが本稿で言う「霞ヶ関文学」というものであって、この月例経済報告の文言を作成する時には、安倍首相も麻生財務相も黒田日銀総裁も同席する。したがって、政権の思惑や金融政策への配慮も当然加わる。したがって、客観的な数値による客観的な加工統計である景気動向指数とは異なり、種々の思惑が入り混じった不透明なものとなる。これをNHKでは総合的判断と称し客観的判断の景気動向指数を「機械的判断」「総合的判断」と評している。どちらをとるかは読者諸賢のご自由であるが、国策に逆らう相場はないのだから、月例経済報告も一応は重視すべきであろう。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)米中貿易戦争に対して世界の市場は身構える
(2)中小型株市場に主役の変化
(3)短期筋の手詰まり感。中期的なリスクは7月にも行われるであろう参院選または両院同時選挙の自民党の敗北
(4)漂流する強弱感
第2部 中期的視点からの相場観
(1)将来の新しい相場への幕開け期待、これの既視感
(2)「貿易戦争は簡単には終わらない」――「新冷戦」と呼ばれる故は確かであって複雑で大きく、しかも長引く。
(3)「米中貿易戦争」と往年の「日米貿易摩擦」との相違点から米中貿易戦争の先行きを読む――米が本当に恐れているものは先端技術の軍事力への直結である
(4)中長期的視点からの相場観――W.バフェット指数から言えば…
第3部 中期的相場観に関する重要項目
(1)株価は景気に先行する。その景気は6年ぶりに「悪化」して「後退局面」に入ることがほぼ確実視された
(2)今の相場は「相場の流れ」という流動的な変化ではなく、「株価構成の基本の変化」という構造的な変化が伏在する。
(3)内需不振を内包した「GDP2%成長」
(4)景気動向指数――「悪化」を発表、月例報告は「引き続き緩やかな回復」
(5)24日発表の月例経済報告――「霞が関文学」の典型・客観的な景気動向指数との違い
第4部 海外の事情
(1)来週6月4日は天安門事件から30周年に当たる
(2)英国メイ首相の辞任
(3)ふたたびMMT(現代金融理論)と、すでに選挙ムードに入っているトランプ、および「ダブルパンチ」を受ける恐れがある日本
(4)米中貿易戦争によって日本はダブルパンチを受ける
(5)米中貿易戦争激化すれば世界成長率0.3ポイント下押し
第5部 中央銀行の問題
(1)政策手詰まりの日銀
(2)中央銀行の独立性を脅かすトランプ
(3)FRBの政策――中央銀行と市場との「対話」は長期景気の終盤になればますます難しくなろう
(4)難解な日銀――さすがの黒田日銀も「市場との対話」にズレを生じたかに見える
(5)FRBと日銀――FRBは政権派が多数を占める日銀の政策委員会のような構図にはなりにくい。一方、黒田日銀を「政権側に立った協力者だ」と言うのは酷である
第6部 そのほかの重要問題
(1)トルコリラ急落の背景について 
(2)令和の高値、円と日経平均、QUICKと日経ヴェリタス紙の共同アンケート
第7部 読者との交信

【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。

なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。

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