古来からある格言は洋の東西を問わず常に頭に置いておく方が良い。それによって自縄自縛になることさえなければ、よいことがある。読者諸賢に「もの教え」をするような言い方で恐縮だから、例を挙げて筆者の取引先証券会社の顧客勘定元帳を開示して説明する。
(1)「天災売るべからず」の格言
これは古来ある有名な格言である。
筆者は現職時代に天災や火災で急落した銘柄を短期売買の顧客に買わせては直後の急反発で売って少々儲けてももらったし、それによって大いに営業業績を上げたことが何十回もあった。
ところで今回だ。
BP(ブリティッシュ・ペトリアム)がメキシコ湾の事故で急落したとき、それに加えて、ハリケーンの被害予測で更に急落して短期間に半値以下になった。不況時代でも60~65ドルの地相場のものが27ドルで買える状態だ。大ブリテンを代表する世界的な銘柄だ。
筆者の体験でも天災や火事で急落したときは売ってはいけない。買うべき所だ。
男気で言うのではない。当該企業は保険が掛かっているから実害は些少だろうし、そのことに気づいた空売り筋が買い戻しにかかれば必然的に上がるからだ。
そこで筆者は原油事故での急落とハリケーンの通り道と言う急落で27ドルになった時に指値をしておいたら幾らでも買えた。どんどん買えると気持ちの悪いものである。売りものが多いから買えるのだから、もっともっと下がるかもしれないと思う。そこが我慢のしどころでナンピンするつもりで構えた。ナンピンの機会はなかった。結果的にはそれが安値近辺だった。
(2)「罫線上で開けられた窓は埋まるものだ」
筆者は以前に光通信株の罫線上の窓埋めを予定して失敗した体験があるが、概ねは罫線の『窓』は埋められるものだと言うのが原則である。この原則は本稿では、五月連休明けの急落で日経平均の「窓埋め」の時に述べたはずである。直近の世界的な例は上述のBPだ。
BPが今回急落の途中で42ドルと40ドルの間が窓になっている。これを埋めに来ると
41ドルが付くことになる。そこで27ドルで買った株が40ドルは売れることになる。ここが筆者と同じ考えの投資家の利食い売り指値の密集地帯になるかもしれないから一歩手前の39ドルを、買った直後に売り指値しておいたのだ。39ドルで売れた。
因みに筆者は、この二つの格言から次の行為を生んだ。極東証券・新宿支店の顧客勘定元帳を敢えて開示する。
買付 6月29日 6000株 27$89.88円/$
売り 7月15日 6000株 39$×86.95円/$
利益 +547万9176円
筆者は勿論、利益ばかりを得ているわけではない。損もしている。
罫線上の格言を盲信して損した光通信株の体験を、機会があれば開示してもよい。
が、この経験には「ナンピン絶対禁じ手のケース」という教訓が生きて、想定通りにならなかったので直ちに投げを敢行したから普通の損失額で済んだが、禁じ手を犯してナンピンしたら致命的な大損になるところだった、という「禁じ手の訓え」が含まれているから話が長くなる。紙幅が尽きたので他の機会にしよう。
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