今年10月の消費増税は日本経済を破壊する。但し大幅な財政出動で景気刺激すれば株価は中間反騰でも大幅に反転する
過去3回消費増税をした、その時は国内景気は好調であったし、国際問題も大きな問題はなかった。それにもかかわらず消費増税後はGDPが減った。ましてや今年は戦後最長だった記録を更新する好景気はピークアウトし、消費増税の頃は既に後退期に入り、「収縮期」に入る寸前かもしれない。
安倍首相がモリカケ問題で財務官僚に借りがあるからその借りを返すために増税を生き甲斐としている財務官僚への恩返しを含めて消費増税を強行すれば、今までの3回と違って景気後退期における増税であるから日本経済を決定的に破壊する。
今までの3回は全て国内景気の好調の最中であった。1回目はバブルの最中であったし、2回目の97年は消費増税により日本はデフレ経済に突入し翌年には大手都銀や大手証券が破綻する金融危機を地獄の淵を覗いた。本格的なデフレ経済突入への分岐点となった。その時点から日経平均は半分以下になった。
経済の停滞によって法人税・所得税が縮小し、その結果として政府の税収は10兆円以上も減り、財政は激しく悪化した。
3回目の2014年の8%への消費増税はアベノミクス相場の青春期から壮年期にかかる元気盛んな時代であり、経済の実態そのものも好調だったにもかかわらず日本経済に大きな打撃を与えた。この時、内閣官房参与のメンバーは猛烈に反対した。浜田宏一博士などは「どうしても増税しなければならないなら1年に1%ずつやって3年間で3%にしたらどうか」とまで説いた。それでも5%から8%へと増税率としては60%の増税をした。
その増税前までは国内の消費は順調に増大していた。しかし消費増税後は国内消費は一気に縮小し、4年以上経過した現在でも増税前の水準より5兆円も低い。
言うまでもなく消費はGDPの6割を占める。その6割を占める部分にヒビを入れるのであるから当然GDPは縮小する。ましてや景気が山を過ぎて「後退期」に入り、場合によったら「収縮期」に向かう途中かもしれない。
今年10月の消費増税の影響を和らげるためにポイント制にして消費者に得点を与えるという案が出ている。そのためにはカード決済をしなければならない→すると小売店もキャッシュレスになるから→小売店の課税逃避行為が防げる→全国の夥しい小売店からの政府の税収が多くなる→モリカケ問題で恩に着ている財務官僚を慰撫できるし、あわよくば税収も増える。
このような経路を説明すると全国の夥しい小売店の票田を失う→消費増税前に7月の選挙がある、それが過ぎるまではアカラサマな悦明は避ける。
この経路で税収に勝算ありとなれば→大幅財政出動で株価を上げて景況感も上げることが出来る、この思考経路を政権と官僚が踏めば、そこから一相場あり得る。
「失われた13年」においてさえ大幅な財政出動で景気刺激すれば株価は中間反騰でも大幅に反転する、という事実を我々は3回見てきた。(これを野村総研R.クー氏は「(この程度の財政出動で株価と景気を一時的にも上げたのは)安い買い物だったのです」と直後にテレビで語っていた。当時は野村に居た上草一秀氏も同じ意見を激しく主張していた。
しかし本筋から言えば、持続可能な経済成長と財政規律の堅持をともに遂行するには、①消費増税を凍結する、②逆に消費税を減税する→さすれば日本経済の6割を占める消費が活性化し→GDPは増大する→税収も増える→財政規律へ向かう。
繰り返すが、消費は日本経済の6割を占めるのだ。他の何を締め付けるよりもこれにヒビを入れることが最大の打撃となる。
今度延期すれば、再々々延期となる。むしろ、増税法案を思い切って廃案にすることだ。そして減税法案をつくることだ。これが嘗てのレーガノミクスの眼目だった。これができなければ日本経済の活性化と財政規律を守ることはできない。
筆者がここで説いていることは下記の本に詳しい。「10%消費増税が日本経済を破壊する」。衝撃的な題であるが、トンデモ本ではない。由緒正しい学者(★註)が多くのデータを駆使して説いたものである。
(★註)安倍政権成立直後、内閣官房参与、京都大学大学院で理系の学者。晶文社、2018年11月刊)
因みに筆者のゼミの友人N氏との交信を掲載する。(1月8日)
(N氏)「ジム・ロジャーズ氏のコメントです。日本株は既に全部売った。日本に必要なことは財政赤字の削減と減税だ、と指摘しています。」
(山﨑)彼はポジショントークが多いが、日本株を全部売り切ったというのは事実と思います。
(N氏)賃金が上がらないのに消費税を上げれば、さらに消費は落ち込み、デフレを支えます。デフレ脱却を唱えるアベノミクスとは真逆の政策です。
(山﨑)下線部、同感です。消費増税は過去3回とも景気を破壊し消費を減らせてデフレ進行に追い撃ちを懸けた結果になりました。
但し超大幅な財政出動で景気刺激すれば株価は中間反騰でも大垪和に反転する。
現に趨勢下降の途中での「失われた13年」の期間でさえも大幅な財政出動は日経平均で6割上昇相場を演じた。いずれも長い下降趨勢の中間反騰であったが。平均6割の上昇は、「爪を伸ばす」ことさえしなければ一稼ぎできる。
【今週号の目次】
(1)12月下落分の3分の1戻りに“敬意を表して”3連騰後の4日目には反落したが、信用評価損が大幅改善し小幅上昇の週末
(2)直近の市況:1――追証売り一巡し、マザーズ株上昇
(3)当面の市況:2――長期の目で見て大勢下限に入っている著名銘柄はいくつか出てきた
(4)「炭鉱のカナリア」――ハイイールド債(低格付け債券)は株価危機を事前に知らせる装置
(5)今年10月の消費増税は日本経済を破壊する。但し大幅な財政出動で景気刺激すれば株価は中間反騰でも大幅に反転する
○因みに筆者のゼミの友人N氏との交信を掲載する。(1月8日)
○但し超大幅な財政出動で景気刺激すれば株価は中間反騰でも大垪和に反転する。
(6)米中貿易戦争は景気後退を招く(未公開株ファンドの大手の最高経営責
任者の言い分を要約)11日、日経新聞掲載。
(7)今年の最大テーマたる米景気のピークアウトとFRBの政策対応に対するトランプの攪乱
(8)トランプ・リスク
(9)衆参両院選挙の可能性
(10)「市場関係者」を対象にした日経ヴェリタス紙のアンケート(12月下旬実施。有効回答79人)
(11)日米ともに戦後最長の景気拡大、これのピークアウトは今年来る
(12)大底を示現して次なる大相場を作出するものは常に政策対応と市場独自の力との合作である
(13)ブラジルレアルとトルコリラの長期見通し
○ブラジル・レアルについての期待
○トルコリラとブラジルレアルについて天才的国際政治学者2015年11月の言い分
○再び、ブラジルレアルとトルコリラの長期見通し
(14)市場を揺るがす統計数値
(15)米中貿易戦争は長引くが結果的には中国は軟化して米国の圧勝に終わる
(16)トランプは、「中国の覇権国家化を食い止めた偉大な大統領」として世界の現代史に残る人になるかもしれない
(17)「『現金は王様』は新年も続くか」
(18)魔のゴールデンウィークか?
(19)今年1年の円ドル相場の市場展望
(20)中国関連株が急反発
(21)亥年縁起と選挙
蛇足 投機家列伝(3)大経済学者たち――リカード、フィッシャー、ケインズ、シュンペーター、サムエルソン
【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。
なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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