投機の流儀 セレクション【vol.9】質実な生活という投資家の自律

「まぐれに入った益金は投資には使えない。口座に置いとくと正当な稼働資金に伝染してツキが落ちるからだ。また、消費にも使えない。投資家として自律する質実な生活に反するから」と云うような意味のことを以前述べたら、読者から「面白い話だ」といわれた。
筆者は大真面目に次のような補足をしたい。

1兆5千億円儲けて1兆円を慈善事業に回した大投機家・兼・慈善事業家のジョージ・ソロスについてインディペンデント誌は彼を「酒も飲まず煙草も吸わず食事も質素なテニス好きの大学教授」と云うし、また、「古今東西の多数の投資家を見てくれば、激変する市場に耐えて最終的に勝利者で終われる者の持つべきものは、資金力だけではもちろんなく、情報収集力でもない。最終的に勝利者で終われる者の必携のもの、それは自律的且つ質実な生活態度であろう」(拙著「投機学入門」二版、講談社文庫、323頁)。
また云う。「だいたい、バブル紳士などと云われる者は最初からなっていない。本当の投資家は……普通の社会人としての保護色をまとっている。普段はベーシックな自分の業務に精を出し云々」(前掲書51頁)。
「投資での成功者は、そろって読書家で、湯水のように使えるはずのカネは静かに寝せておき、夜は酒量を控えて燈火に読書三昧の時を過ごし、夏は海辺の喧騒を避けて静かな緑陰に思索を楽しみ、云々」(フォーブス誌)。
また云う。「世界経済の三賢人」(チャールズ・モリス著、有賀裕子訳、日経新聞社)には、ボルカー元FRB議長(先日“ボルカールール”で世界の株式市場に波紋を起こした、かのボルカーである)と上述のジョージ・ソロス及びW.バフェットをあげているが3人共通していることは、「賢明さ、謙虚さ、質実さ」だという。筆者はこういう人々の生活態度にひそかな憧れをもってきた。勿論、本稿には自分のことは棚に上げて述べているが。

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