ナンピンが禁じ手となる場合がある。断じてナンピンしてはならず即刻損切りすべき時がある。
それは企業分析的価値観で買ったのでもなく、「悪いことは承知してるがあまりにも安すぎる」と云う理由で買ったのでもなく、「業績は良くならないが無借金経営で且つ利益剰余金が当該銘柄の時価総額の何倍もある」(第二市場の古い銘柄にまれにある。今もある)と云う理由で買ったのでもなく、相場の勢いに乗って「飛び乗り飛び降りで素早く儲けよう」として買って想定通りにならなかった(つまり、相場を張って想定外の現象だった)ら即刻売りである。その場合のナンピンは命取りになる。
古来、市場に残る著名な大損事件はみな、「相場を張った」つもりの曲がったときのナンピンである。平成になってからの例で言っても大和銀行の海外支店の破綻、住友商事の銅相場の大損、英国の名門証券会社ベアリング社の相場の大損、などのように、世界的著名な事件は皆、「相場を張った時」に想定通りにならなかったのでナンピンしたものだ。
そういう時は「勝負に負けた」のだ。故に、この時のナンピンは負けた戦いに兵を送るようなものだ。傷を深くするだけだ。故に、株の実態価値を買ったのでもなく安値だからと買ったのでもなく、相場を張ったつもりで買ったときは、想定通りにならなかったら即刻売りである。早いほどいい。この場合はロスカットを最初から決めておくのも一法である。逆指値も一法である。マトモな指値売りなんてしてはいけない。タダになってでも売るというつもりで投げることだ。結果的にはそうやってもマグレに儲かる場合がある。
「ストップ安の比例配分が二日続いて三日目に売り買い完全合致で寄りついたら、それを買えば、その日はストップ高だ」と云う経験則がある(と筆者は思っている)。
筆者は短期相場は原則としてやらないが、年に一度くらい、やってみることがある。
実態価値を買った、割安株を買った、と云う時は前述列挙したことがない限り誰が何と言おうがナンピン、ナンピン、またナンピンだ。かくて資金が尽きるのをナンピンスカンピンと云う。結構ではないか。
そのかわり、相場を張った(勝負に出た)ときに想定通りにならなかったら即刻投げだ。
負けた勝負に深入りしてはいけない。傷に塩を塗りこむに等しい。負けいくさに出兵することになる。
この、「断じてナンピンすべき時」と「断じてナンピンは禁じ手の時」の峻別を僭越ながら力説したい。
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