投機の流儀 セレクション【vol.3】ルールと契約は守らねばワリを食うのは自分だ

市場での行動は 異種格闘技のバトルロイヤルのようなものであって、ルールと契約は守らねば割を食うのは結局は自分である。判定負けになり利益は全部没収され反則金を取られ世間から指弾される。
そのかわり、法律と契約さえ守れば、あとは何をやってもいいということになる。普通の付き合いでは「カケヒキに長じた厭な奴」と嫌われることでも金融市場と云うフィールドでは「はしこい仕事をする見上げた奴」として畏敬される。金融市場とは、勝利者には惜しみない賛辞を贈られる世界である。
これを良くわきまえて、契約と法律は堅く守り、一方で、ナイーブな良識派ぶった言動を取らないことが肝要であろう。

よく巷で「金がありすぎて不幸になった人がたくさんいる。カネは不幸のもとにもなる」と云う人があるが、それは違う。金そのものは善でも悪でもない。ただそこに在るだけの存在だ。それを獲得する人・持つ人・使う人が善であり悪であったというだけのことだ。税法や金融法を守らなかったり、人を裏切ったり、相続のルールを無視したりするから「金がありすぎて不幸になる」のであって、法律と契約を守りさえすれば金は多ければ多い程よいのだと思い定めて市場に出かけようではないか。ナイーブなことを言っていれば市場に飲みこまれるぞと。

ルールの話であるが、筆者が4年間、苦楽を共にした後輩が異種格闘技のルール変更を無視して、ついに懲役2年の実刑判決が下った事件があった。(控訴して執行猶予付きになったが)。彼は押し相撲型の正面突破を旨とする正統派で、筆者よりもはるかにマトモな男だったが,好漢惜しむらくは格闘技ルールの変更を知らず、中堅証券社長から前科者になった。少し遠隔地だが機会を見て訪ねて励まそうと思っている。異種格闘技のバトルロイヤルだからこそ、ルールとその変更は熟知せねばならない。

筆者は人さまのことは言える柄ではないが、筆者はルールと契約は正義感からではなく自分の精神衛生の安定のために順守している。
私事にわたって恐縮だが、たとえば筆者は平成17年後期から2年間、或る公開株の8番目の株主で会社四季報の大株主の欄にも2年間は名前が掲載されていたので、当該株の売却については何度も有価証券取引等監視委員会から調べらたが、ロックアップ契約(一定期間は株を売らないという企業側と株主との契約)の順守は勿論のこと、あらゆる条項で「李下に冠を正さ」なかったので、少しも気にすることはなかった。税法も信頼する専門家に毎年指導を受けている。
これらは決して正義感からでも倫理観からでもなく、自分の精神衛生の保全のためである。筆者は倫理観や正義感を人様に説く柄ではない。風のそよぎにもビクつくという生活は過去に存分にやってきたから今の筆者には日常生活の精神衛生の安寧が重要なのだ。それだけのことだ。フィールドでの緊張と共に精神衛生の安寧、これは重要なことであると思っている。これがなければフィールドでのパワーが落ちるであろう。その故にも大切なことなのであって、倫理観で説くのではない。それだけのものだ。

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