投機の流儀 セレクション【vol.1】青い鳥症候群

儲かる情報なんて言うものは、どこにもないし、また、足元にいつでもある。
情報を追いかける投資家を筆者らは「青い鳥・症候群」と言っている。
特にインサイダー情報などというものには近寄らないことだ。百害あって一利なし。
筆者は倫理的立場で言うのではない。割に合わないから言うのだ。
年間、約千件の摘発がある。自分がやれば必ず摘発されると思った方がよい。

筆者はインサイダー取引と誤解されて有価証券取引等監視委員会に調べられたことが2回あった。
いずれも彼らの早とちりであったことが直ちに判明した。

筆者が以前に取締役をしていた上場会社の株を売った時である。勿論、筆者は当該会社のIR責任者に「むこう1週間は突発的な事件でもない限りは重大事実の発表はない」という旨の回答を得て(念のため後日の証拠として回答はFAXかメールでもらう)、然る後に売り、且つ、証券会社の窓口に金融庁長官あての報告書を届けておく。
そのあと、念のために、いつどこで売ったかを当該企業に報告しておく。そこまでしていても調査されることがある。なお念のために、そういう書類は公証役場に持ち込んで確定日付の割り印をもらっておく。(そういう書類が何年何月何日に真に存在した、と言う公的証拠である)。
もし本当にインサイダー取引だったら、勿論、利益は没収、その上、犯罪だから罰金がくるし、重ければ懲役である。割に合わない。
もし「耳寄りの情報」や「極秘情報」が入ったら、「市場に知られていなくて自分だけが知ったという情報はそれ自体が怪しい」と思わねばならない。取締役は立場上、市場公表より早く知ることがいくらでもある。ゆえに用心深い上場会社の取締役会は取引終了時刻(3時)までは解散しない事にしている。重要事項の決定や判明(公表していたよりも大幅に利益がでる、など)の会議には3時までは取締役会を中座もしない。「李下に冠を正さない」のだ。午後3時を過ぎてしまえば「公表後12時間以内は禁止」という制限はクリアされるからだ。3時を過ぎれば、どんなに早くも翌日のヨリツキでの売買になり、公開市場の取引とイコールチャンスになる。
W.バフェッとは言う。「仮にFRBの議長が今後の金融政策についてそっと耳打ちしてくれたとしても私がすることに何の影響も与えないだろう」。

インサイダー情報などというものは市場にはないし、もしあってもそれは「割に合わない」のである。インサイダー情報による売買というものを定義するとこうなる。上場会社(その親会社・子会社含む)の役職員・株主が、その会社の株価に影響を与える重要事実を知って、その重要事実が公表される前に当該銘柄を売買することを言い、損得に関係なく、売っても買っても禁止行為である。「公表される前」というのは二社以上の報道機関に公表されて12時間以内を言う。見つかれば、利益があった場合は全部没収されるし罰金が科せられるし重ければ実刑に処せられる。儲けが無くも立場上で知った内部情報によって意思決定した売買はインサイダー売買として罰せられる。とても割に合うものではない。
内部情報を追いかけてばかりいる人は必ず自滅する。兜町では昔から「早耳筋の早倒れ」と言って戒めたり揶揄したりしてきた。ケインズも「インサイダー情報等に頼らなければ投資家は儲かるのに」と70年前に言っている。

NEXT

電子書籍を読む!

amazon kindle   楽天 kobo