投機の流儀 セレクション【vol.92】今はバブル的要素はないが、過去から学ぶこと

今はバブル的要素はないが、過去から学ぶこと

かつてグリーン・スパン元FRB議長は「根拠なき熱狂」(Irrational Exuberance)と警告し(★註1)熱狂するNY相場を一時落ち着かせたあと、配下のエコノミストに命じてバブルを定義させようと探究させた。

その時たたき台になったのは、日本の平成バブルとその崩壊であった。
当時の仮の結論は「バブルは崩壊して初めてバブルと断定できる」(この言葉は後に日本で有名になった)。
またはグリーン・スパン自身は「潮が退いた後でなければ誰が素っ裸で泳いでいたかは判らない」と言った。
ただ言えることは、市場が陶酔状態にある時は現状肯定の様々な見方や論理が罷り通るものだ。
陶酔状態に対して不都合な論理は消去されるものだ。
結果的に当時のFRBはバブルの定義を無駄な努力だと諦め、その代わりにバブル破裂後の金融政策こそ経済全体の命運を左右すると割り切り事後対策に焦点を絞った。
その時に大いに参考にしたのは90年初頭からの日銀政策の失敗であり、それを反面教師にした。
本稿で何度も触れてきた三重野康の破壊的行為(★註2)である。
90年1月から始まった日銀のバブル潰しは常識では考えられない急激な利上げで株価を暴落させ土地を暴落させバブルはとっくに冷えているのになお何度も何度も追撃して日本経済を破壊に導いた。
海外から見てもこれは異例であったのであろう。

J・K・ガルブレイスは、バブルのことを「正常な判断を失わせる陶酔的熱病(ユーフォリア)」と言った(★註3)
(★註1)1996年12月に当時のFRB議長アラン・グリーンスパンが米国株価の上昇にバブルの兆しを牽制する際に使った言葉(「How do we know when irrational exuberance has unduly escalated asset values?〈根拠なき熱狂が資産の価額を不当につり上げている時期をどうやって判断できるのか〉」)で、2000年にかけてのネット関連企業を中心とした「ネット・バブル(ドットコム・バブル)」の発生と破裂に際して、この言葉が繰り返しメディアで取り上げられたことからバブルの同義語として定着した。

(★註2)米FRBは08年発生のリーマンショックを収集するために採った異常緩和の出口を、「0.25%ずつ年4回に分けて行う」という用心深さだが、三重野は、バブル潰し・格差の是正という美名のもとに、「その4倍幅の1%を年に何回も行う」という常軌を逸した引き締めを遂行し、株価は4分の1になり地価は5分の1になってバブルは夙に萎んで居るにもかかわらず金融引き締めを継続した。
筆者に言わせれば、「失われた13年」のA級戦犯は三重野康を措いてない。
彼は死亡した。
死者を鞭打つ勿れ、などと賢しら気なことを筆者に言う者もいるが、死者であろうと存命中であろうと中央銀行総裁を務めた者の評価は棺を覆っても終わるものではない。
現に井上準之助は1世紀近く経ても「嵐に向かって窓を開けた」と今でも難詰される。

【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。

https://note.mu/touki

なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
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