投機の流儀 セレクション【vol.87】アベノミクス大相場は夙(つと)に終わっている

アベノミクス大相場は夙(つと)に終わっている

冒頭から暗い話しで恐縮だが、筆者と読者諸賢とは、市場という戦場で共に戦う、損得を共にする戦友だと思っているので、常にホンネを語ってきた。

本稿では平均株価が2倍か3倍になる相場を「大相場」と言ってきた。
数年に一度しかない。

これは1965年以降6回あった。
アベノミクスはそのうちの一つである。
その都度2倍にすれば金融資産は必然的に64倍になったはずだ。

始動期は2012年11月衆院解散の日8,665円→2013年5月末16,000円弱までの上昇これが「青春期相場」だ。

これは業績は必ずしも良くなく、世間は必ずしも明るくないのに先の夢を買う。
所謂「理想買い」の世界だ。
当時、麻生蔵相の言ったところの「期待先行で持って行く」である。
木佐森吉太郎著「株式実戦論」の言葉を借りれば、寒中の吹雪の中に芽を出した雪割草の一片を見て人は春爛漫を想定する。
それは峻厳なる現実ではなく豊富なる可能の世界であるから人は夢に鼓舞されて無茶苦茶に買う。
そこは「あばたもえくぼ」であるところが青春期相場の本質だ。
これが理想買いの本質だ。
常識では考えられないほどのエネルギーを出し、何でも買えば上がる。
優良株もボロ株も全て上がる。
この時に金融資産の大半をつくってしまわなければならない。
これが一番ラクなやり方だ。
「いにしえのいわゆる善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり」と「孫子」の軍争篇にある。
(★註)続きがある。
「勇武もなく智略なし」とある。
特別の武勇も要らないし特別の智恵も要らない。
一番確実なやり方だ。
そこで5月末の16,000円弱の時にバーナンキショックがあって、上がった分の半値を急落した。
月足で見れば、13年5月は長大な上ヒゲしかない内容に見える。
青春期相場だけにその終わり方も派手だった。
(★註)織田信長の戦い方の本当の凄味は、彼は桶狭間の奇襲戦の成功で世に出たのに、二度と同じことをやらなかったことであろう。
相手の2倍3倍の戦力を整備するまでは開戦しない。
そして姉川の闘いみたいに敗けること必至となればナリフリ構わずサッサと逃げ帰るところであろう。

そこから型通りの「壮年期相場」が始まった。
その天井は15年の6月21,000円弱のところで6月から8月半ばまで2ヶ月間の逆ソーサ鍋底型)の大天井を形成した。
ここは壮年期相場だから「現実買い」である。
つまり業績相場である。
業績の良し悪しによって銘柄が別れる。
銘柄選択の時代である。
ここでも余程間違わない限り優良株を買っておけば誰でも儲かる。
そこで15年の8月末に大幅下落をして壮年期相場を完了した。
そこから筆者は根本的に強気を述べなくなった。
キャッシュポジションを高めにとろうと呼びかけた。
これはこの次に来るとしても「老年期相場」だからである。

老年期相場の本質は「夢をもう一度」であり、故に銘柄の峻別であり小型株相場であり仕手株相場である。
本気になってやる時期ではない。
本気になってやるのは大底圏内でたくさん買って青春期相場で一挙に金融資産を増やすことであり、そしてそこでまた一旦キャッシュポジションを高めたものを壮年期相場でまた利益を上げることである。
本質的にはここで終わっている。

老年期相場で富を蓄えようなどとはあまり考えないほうが良いと筆者なら思う。
それで老年期相場は本稿では、なんとなく弱気が漂っていたと思う。
2018年の老年期相場は2016年の2月アベノミクス相場の半値押し14,865円(平均PBR1倍)で完結し、中間反騰を為して再び同じ値段、1円違いのダブルトップ14,866円(PBR1倍。アベノミクス相場の半値押し)で壮年期相場の完結を確認して老年期相場に入った。
老年期相場は16年6月24日BREXIT暴落の日から始まる。
たまたまこの日はその前年壮年期相場の大天井と同年同日だった。
天与の大底、「天与の1円違いのダブルボトム」であった。
ここから老年期相場が始まったが、18年1月下旬24,100円をもって完結した。

ここで型通り青春期相場(理想買い)→「壮年期相場」(現実買い)→「老年期相場」(夢をもう一度で「老いらくの恋」だから仕手株相場・里帰りした銘柄の再出発など)である。
国際的優良株の代表格だった東芝が仕手化し、16年2月の壮年期相場の一番底で155円を付け、その年の12月が445円まで行った。
10ヶ月で3倍というのはもはや大型国際優良株ではなく仕手株であろう。
東電も仕手化した。
経団連銘柄の代表株だった東電が低位仕手株として乱舞した。
これはみな老年期相場の特色である。

このように型通りに大相場は、青春期、壮年期、老年期と過ごしてきた。
ここから先はモノのハズミで1,000円や2,000円は上がることはあるかもしれないが、そこは非常に儲けにくい。
「このような難しい相場で何をやったら良いか」と人は言う。
筆者に言わせれば少しも難しい相場ではない。
壮年期相場の終わりから老年期相場にかけてほとんど全てを換金しキャッシュポジションを高め「一足一刀の間境」(★註1)もって「睡猫の位」(★註2;すいびょうのくらい)で相場を見つめ手を出さないことだ。
稀に稼働資金の一部を使って急落相場のバッファロー現象を買って小すくいをして少々儲けることもやってみるのも良かろう。
直近の例で言えば8月のスルガ銀行のストップ安比例配分の翌日の出来高の5千万株に膨らんだところの下げ相場、これを550~560円で買い3日後に100円高で売るという動きであろう(この事例は25日の「10人限定セミナー」で筆者の私的事例として話した)。
またはマザーズなどで乱舞した小型株であろう。
但しこういうものは3日か1週間の勝負のつもりでやるのであって、思惑通りにならなければ原則としてすぐに投げるものだ。
これが老年期相場の過ごし方であろう。
だから「難しい相場」では少しもない。
手を出さなければいいのだ。
少しも難しいことではない。
少々の金額で手を出してみて「手を出して判る相場の弱さかな」を味わうのもまた良かろうというだけだ

ここら先は型通りの「老年期相場」。
これは昔から仕手株の乱舞と小型株だ。
最も儲けにくい場だ。
壮年期に全株を売り切って「10年兵を養うはこの日のため」と、意図的に「休むも相場」の姿勢を、セミナーでもテレビでも言い続けた。

世界の大型優良株の東芝が16年2月に155円、これは50年前の株価だ、そしてその年の12月には445円と3倍に化け、まさしく仕手株化だった。
この「老年期相場」は18年1月の24200円を以て大天井を付けて完結。

要するにアベノミクス大相場は本質的には完結しているのだ。
あとは、モノノハズミで1000円や3千円上がることはないとは限らない。

だが、すでに3倍になった平均株価が10%上がったところで、騒ぐことではあるまい。
キャッシュポジションを高くとって「一足一刀の間合い」を保って、「睡猫の位」を堅持して、確固たる意思を以て「休む」をのは「無為に過ごす」のではない。
それは立派な市場行動だ。

(★註1)「一足一刀の間境」;一足踏み出せば我が太刀も相手の太刀も届く、死地に入る、その一歩あと。

(★註2;すいびょうのくらい)「睡猫の位」;牡丹花下に眠る猫さえも、宙を飛び来る蝶をめがける、という意で、ぼんやり休んでいるのではなく「牡丹花下の睡猫心舞蝶に在り」の心である。
何度も既述した。

【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。

https://note.mu/touki

なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
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