投機の流儀 セレクション【vol.61】「千日手」に陥った日銀

「千日手」に陥った日銀

「量」から「金利」へ金融政策の軸足を移し、持久戦に持ち込んだ日銀はいずれは景気後退の波がやってくる。
景気好調は永遠には続かない。
長短金利の見直しが必要になってくるであろう。
現在は長期金利はゼロ%程度に誘導しているが、これを0.2%ほど引き上げるという見方が出ている。
だが下手にそうすると、

緩和縮小観測が出る→円高株安を呼ぶ→したがって緩和縮小ではない

というメッセージを強烈に送り続けなければならない。

有効求人倍率はバブル期を上回った。
米国は過去最長景気の120ケ月
(ITバブル)に近付いてきた。
日本も「いざなぎ超え」に近付き最長景気に近付いてきた。

永遠に好景気ということはない。
今、世界景気は絶好調であるだけにこれが気になる。
日本経済の拡大局面は高度成長期の「いざなぎ超え」を果たしたのちに難関が待っているのは来年10月に予定される消費増税である。
その時まで好景気が続けば(戦後最長景気を実現すれば)増税は実施されるであろうが、その後は反動による冷え込みも予想される。
したがって新しい法案をつくって増税をまた延期することも考えられる。
日銀がETFの買い入れ減額などを始めて金融正常化への半歩を踏み出せば、急激な株安・円高を招く恐れもある。
金融緩和政策の維持は、米金利上昇をきっかけとして益々不安定さが高まっている。
ここで進退窮まっているのは日銀である。
日銀だけが欧米に遅れた。
何も黒田さんが悪いわけではない。
出発点が遅れたからだ。

★註
千日手――将棋で双方が他の手を指すと不利になる場合、同じ差し手を繰り返すこと。
三度それが行われれば無勝負となり指し直しをする。
しかし、これは将棋の世界の話だから、現実の金融政策で「無勝負で指し直し」というわけにはいかなない。
金融緩和を縮小する気配が少しでもあれば、

正常化への道を踏み出すと市場は想定する→金利上げを想定→株式市場動揺

という流れになりかねない。
「木は天まで伸びない」(「ジャックと豆の木」)。

いずれは景気後退に備えて緩和の余地を残しておくという考え方は根強い。
現にFRBがこれに二歩目を踏み出した。
このままでいくと19年10月には消費増税が予定される。
景気後退があり得る。
そうすると金融緩和をしなければならない。
ところが緩和の極致にある今ではそれができない。
よって緩和を縮小し、金利を少々上げ、不況期の金融緩和のノリシロをつくっておかねばならない。
FRBの考え方と同じである。
日銀はこの苦悩に直面している。

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。

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