投機の流儀 セレクション【vol.110】「北方領土は一坪も取り返せない」を撤回する

「北方領土は一坪も取り返せない」を撤回する

筆者は「外交の安倍」の対プーチンの力を看破して標記の通り述べ続けてきた。しかし、今週号をもって、それを撤回することにしたい。
それは極めて単純な動機による。元外務省主任分析官の佐藤優氏の言い分に従うだけだ。
安倍首相はプーチンと24回会っているが、常に格下の者が座るとされる右側(向かって左)に座っている。しかも悪いことには「プーチン大統領と私とで北方領土問題は解決する」と公言していた。この言は外務省のテクノクラート、特にロシア外務省のラブロフ外相はカチンとくるはずだ。よって実務は進まないはずだ、と筆者は直観した。
ところで、安倍首相はドイツのメルケル首相と会っているときはメルケル首相が右側に居た。これは第二次世界大戦中の同盟国同士でもあるしメルケル首相の配慮であったかもしれない。
古い話しだが、日露戦争での203高地と旅順港陥落の時「敵の将軍ステッセルと乃木将軍との水師営での会見」において乃木将軍はステッセルと自分との座席の位置を配慮し、「これぞ日本武士道の精神」と諸外国に感嘆せしめ、野木将軍の美挙は「きのうの敵は今日の友」と歌にまでなった。外交というものは言葉であり、最終的には文書であるが、そのプロセスにおける一言一句や一挙手一投足の積み重ねが重要である。最終的には文書であるが、文書はその積み重ねの結果でしかない。
以上のような点から見て筆者は、安倍首相対プーチンは何年も前から既に勝負ついている、と見ていた。

ところが、前述の佐藤優氏は次のように言っている。主旨を要約する。
ロシアのラブロフ外相は河野外相にカフスボタンをプレゼントしたが、このカフスボタンのデザインは1956年の日ソ共同宣言(北方領土返還を盛り込む)に調印するためにモスクワを訪れた河野一郎氏(現外務相河野氏の祖父)と鳩山一郎首相とが滞在した宮殿をデザインしたものであるという。これは「貴殿の祖父が調印した1956年の日ソ共同宣言を俺は銘記しているよ。その印だよ」とラブロフ外相は63年前に調印した河野一郎氏の孫に当たる河野外相にカフスボタンのプレゼントをもって伝えたのだ。
一方、河野外相は、ラブロフ外相の趣味などを調べてあって日本のウイスキー「響」をプレゼントしたそうだ。(★註)

なお、佐藤氏が言うには、ロシアが領土関係を日本と解決する意向は、中国に対する牽制が含意であると思われる。

以上が佐藤優氏の言い分の要約である。
筆者は対ロシア外交のことを詳しく知っているわけでは決してはない。ただ、①テレビで何回も見る画像の積み重ねと②外務相に対する安倍首相の無配慮な言い分と③昔アラスカを安売りして後悔しているに違いないロシアの内心と、それら3つを考えたときに筆者は直観的に「北方領土は一坪も戻らない」と言った。ところが、元外務省主任分析官の佐藤優氏の方が筆者よりもずっと詳しいはずだ。
なお彼は北方領土のことに関連して偽計業務妨害罪の有罪確定で外務事務官を失職したという経緯を持つ。筆者など足元にも及ばないほどこの問題には精通しているはずである。よって、「一坪も戻らない」はここに撤回する。
(★註)こういうのを「食卓外交」といのだそうだ。田中角栄元総理が中国との国交回復10年を祝して(だったと思う)中国を訪問したとき、中国は彼の好物を調べておいて、銀座ワコウの東隣りの中村のアンパンと新潟長岡の味噌を使った味噌汁と「飲水思源」の色紙を用意して田中氏を迎えたという。筆者の親しいジャーナリスト嶌信彦氏から聞いた話である。既述したような気がする。

【今週号の目次】
(1)当面の市況――中間反騰の第一波はここで終わりか
 ○当面の市況――10月2日の大天井後の下げ幅の3分の1戻しと、黄金分割の小なる方(約38%戻し)との真ん中で止まって下げに転じた相場
(2)緩和派に「転向したFRB」と「苦悩する日銀」
(3)優柔不断で前言撤回の多かった速見元日銀総裁を想起するパウエルFRB議長(前言撤回を繰り返す人)
(4)通常国会の問題点――厚労省のデータ問題は、今は景気動向指数に誰も触れてないが、実は景気判断に関係する。今の野党はそんなことには気づいてない。
(5)衆参同日選挙の可能性と安倍首相退陣の懸念
(6)GPIF14.8兆円の損失、国民全体に関わる
(7)日欧EPA(日欧経済連携協定)1日発効、米の保護主義を乗り越え日欧経済に期待
(8)「新冷戦」が招く近い将来の危機
(9)「アップル・ショック」の衝撃は市場が吸収しつつある
 ○米経済、今のところ好調
(10)英、迷路の出口は見えない。もし「合意なき離脱」に至れば、英GDPのマイナスは史上最大となる。
 ○英企業の景況感は堅調
(11)欧州株式事情
 ○EU,見通しを下方修正
(12)「有事のキン」か、9ヶ月ぶりの高値
(13)「北方領土は一坪も取り返せない」を撤回する
(14)日本民族の志向としてミクロが得意でマクロは不得意だという面がる
(15)我々投資家は「不確実性」の中にいる
(16)「昨年は、儲かることも損することもなかった」という図表付をご購読の読者S様との交信(2月5日)
(17)「キャッシュポジションを高めておいたからよかった」というAさんとの交信(2月8日)
蛇足――投機家列伝5
投機・投資・ギャンブル――人々はしばしば、リスクを嫌う故に決断することを避けたがる

【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。

https://note.mu/touki

なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
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