投機の流儀 セレクション【vol.105】アベノミクス相場の正味6年間の「完結編の儀式」は一応済んだ。今後は「実勢悪を売る時代」になる

アベノミクス相場の正味6年間の「完結編の儀式」は一応済んだ。今後は「実勢悪を売る時代」になる

昨年秋の中間選挙の後、「日米の株は高かったがその持続性には疑問符がつく」と2週間続けて述べてきた。中間選挙の後は2年後の大統領選挙に向けて
政権側が景気対策を打ち、株高に関心を向けさせるために景気敏感株が高いことが今までの傾向であった。トランプ政権は景気が好調であるにもかかわらず、大型減税を繰り出してきた。その反動で19年以降は景気は確実に減速する。トランプは好景気にもかかわらずインフラ投資で財政出動の大盤振る舞いで景気を刺激してきたが、インフラ投資は民主党も取り組みたい政策であるからトランプ政権の下で株式市場では「ねじれ議会」と政策をにらみ合わせながら議会に関係なく大統領権限だけでできる外交に力点を置き、米中摩擦を劣化させて海外に敵を求めて国内の凝集力を高めるという権力者の常套手段をとるであろう。こういう大統領の下で株式で利益を上げることは容易な技ではない。

昨年2018年は年初から「2018年ほど好悪両材料が豊富な年はない」と本稿では言い続けてきたが、確かに、「稀に見る大幅高を演じた大発会」と、「26年ぶりの高値」と「年初来安値を示現した年末」ということから見れば、「今年ほど好悪両材料が豊富な年はない」の象徴だった気もする。

まさしくマスメディアが騒いだ「26年ぶりの高値」(実はその直後から平成金融不況の予兆としての銀行株の一斉大暴落が起こり、15,000円安に向う傾向的下げが「下降トレンドの逆青春期相場」の開始であったが)、また「戦後最大の月間下落率としての12月」で終えた。
現象面から言えば26年ぶりの高値、戦後最大の月間下落率の12月ということを演じた。

本稿では、「株式市場の長期的な流れは青春期相場の始動とその終焉、壮年期・老年期相場の始動とその終焉」と大きな局面で眺めてきた。アベノミクスもそのように述べてきた。老年期相場の終りの始まりは10月2日の24,400円以降である。
本稿では10月7日号で1月の24,200円と10月2日の24,400円をもって「壮大なダブルトップの可能性が強い」と述べてきた。この老年期相場の終焉の儀式が10月からの3ヶ月間で約5,400円安、下げ率で約22%安となった。これが老年期相場の終焉の儀式である。

壮年期相場の大天井は2015年20,952円(6月から8月の逆鍋底型天井)であり、老年期相場の24,400円だということは老年期相場の天井が壮年期相場よりも高いということは変だと言う人もいるであろうが、確かにそうは言えるがエリオット風に言えば、これは「第3波動の天井のほうが第2波動の天井よりも高い」ということになる。ただ、エリオットの3つの波は無機質で機械的に聞こえるから、やはり本稿では青春期相場・壮年期相場・老年期相場と言ってきた。

これは約60年前に出た哲人木佐森吉太郎の「観念相場・壮年期相場・老年期相場」という用語に倣ったものである。相場は生き物だ。しかもヒトより賢い生き物だ(立花証券創業社長石井久氏の言葉)。かつ、ヒトよりも狡猾な生き物だ。したがってエリオット波動の無機質な表現よりも筆者は木佐森吉太郎氏の表現の方が判りやすいような気がする。
NYでは20%以上下がるとトレンドの変化とされるから、10月2日高値から22%下がった今日はトレンドの変化と言って良かろう。今後は下降トレンドの逆青春期相場・逆壮年期相場・逆老年期相場と言うように改めたいと思う。

すると、月間下落率としては戦後最大だった12月の下落は逆青春期相場(理想売り・今は好景気だが将来の暗さを先見して売る観念売りの相場)である。
日経ヴェリタス紙の12月30日発行号では、1ページの大見出しが「『陰の極』は見えたか?」という見出しが出た。が、決してそうではない。
陰の極とは逆壮年期相場の大底または逆老年期相場の大底を言う。たいてい逆老年期相場の大底はダラダラとして鍋底型が多く、03年の大底や09年の大底(リーマンショック直後の)のような鋭角的なものであるとは限らない。
「大底には色々な形がある」の項目をご参照願いたい。12月は年初来安値を付け、12月2日の大天井から言えば1,000円の大台を6回割って(24,000円台から18,000円台)年初来最安値を更新して見せた。
確かに「26年ぶりの高値」と「年初来安値を示現した年末」ということから見れば、「今年ほど好悪両材料が豊富な年はない」の象徴だった気もする。しかし、大納会は終わりの5分間で辛うじて2万円に乗せ、老年期相場の終焉の意地を見せて終わった。

2011年11月14日の衆院解散決定の日(8,655円)から老年期相場の大天井の2018年10月2日(24,400円台)をもってアベノミクスの正味6年間は完結編を迎えた。

【今週号の目次】
(1)アベノミクス終焉の序幕式は済んだから週明けは高い―但し中間反騰だ
(2)次は実勢悪を見る時がくる
(3)恒例の日経新聞の正月アンケート
(4)今年最大のイベントは米景気と日本景気の終焉だ
(5)大底の付け方にもいろいろある
(6)PBRとPERから見た19年の展望――観念売りから実勢売りへ
(7)今年は調整継続時期を擁して、何回かの中間反騰を経てファンダメンタル面でもテクニカル面でも大底に届く可能性あり、すなわち「来年に跳躍するための屈伸の姿勢」をとる楽しみ多き年になろう。
長期的なシナリオに見識のない大手証券の言い分
(8)今後の市況概観――アベノミクス相場の正味6年間の「完結編の儀式」は一応済んだ。今後は「実勢悪を売る時代」になる
(9)警戒サインが灯っている
(10)「財政の崖」より心配なトランプの政策運営――政権幹部の乱暴な人事
(11)中国景気の減速が加速する
(12)昨年は戌年だった、「戌は笑う」であったか――9人の投資家の概略
(13)海外勢の売り越し13兆円
(14)戦後最長の好景気は「拡大期」から「山」を越えて「後退期」へ向かうであろう
(15)19年の景気と株価「大胆予測」
(16)「環太平洋経済連携協定(TPP11)」が12月30日発効
(17)武者陵司氏、超長期の超強気見通し――日本株式の新時代に
蛇足 投機家列伝(2)

【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。

https://note.mu/touki

なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
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