お地蔵さんぽ【vol.15】名もない地蔵尊

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

名もない地蔵尊

僕がいちばん好きなタイプのお地蔵さまは、名前もよくわからない、ネットに情報が出ていなくて、極端なことを言えば、それがお地蔵さまなのかどうなのかさえも判然としないものが好きだ。

墨田区役所の近くに枕橋というのがあって、その橋のたもとにお地蔵さまなのかなんなのか、よくわからない石像がある。

まずは、苔むしたお社に注目したい。
いい感じに苔むしている。

ちなみにこの枕橋だが、かつては源森橋と呼ばれていたそうだ。
隅田川の支流である源森川にかかる橋だからだ、今は別の橋が源森橋と呼ばれ、この橋は枕橋なのだ。

そして、お地蔵さまはこちら。

花が供えられている。
花屋で売っている黒い鉢に入った花だ。
どこかユーモラスなお姿のお地蔵さまだ。

また、この祠のサイズからすると、もっと大きなお地蔵さまかなにかが入っていたようにも思える。

それが失われ、いまのお地蔵さまに変わったのだろうか。
どこかヤドカリ的なかんじでおもしろい。

手を合わせていらっしゃるように見える。

このところ、何度かこのお地蔵さまの前を通った。
平日の昼間なのだが、この道を通っている人は僕1人だけだ。
この先、言問橋までは、牛島神社と隣接していて、車も通らない道だ。
お花見シーズンなどは多くの人が行きかうが、普段はほとんど人通りがない。

たぶん江戸時代は、このあたりには多くの人が行き交っていたのではないかと想像できる。
今の物流の主役は車であり、道路だ。
コンビニに商品を運んでいる車を散歩の途中でもよく見かける。

しかし、昔は水運が主流だった。
船で荷物が運ばれていた。
海は大きな船、そこから荷物が小分けされて、川をのぼっていく。
東京の地名には、今でも東京の地名に揚場や河岸といったものが残っているが、これは舟から陸に物資を荷揚げする場所だった。
揚場は大名の物流拠点で、河岸は庶民のそれだったのだ。
河岸では、そこで売買が行われることもあった。

東京の人の流れについていえば、今は、鉄道が中心だ。
駅に行けば多くの人がいる。
しかし、鉄道のなかった昔の人は徒歩で道を移動した。

隅田川沿いのこのあたりにも昔は多くの人が行き交っていただろう。

そういえば、明治以降隅田川に死体であふれたことが2度あった。
1回目は関東大震災のとき。
そして、第二次大戦のときも、空襲を逃れようとした人々の死体が川に浮かんでいた。

そういったものをすべて見てきたようなお地蔵さまに見える。
それだけに柔和な表情とは裏腹に、その眼には様々な苦悩を見てこられたのではないかと思うと、また、胸が苦しくなる。

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この連載について

初回を読む
人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。