お地蔵さんぽ【vol.7】さまざまな理由でお地蔵さまは立っておられる

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

さまざまな理由でお地蔵さまは立っておられる

『散歩の達人』という雑誌で上野の特集をやったんだけど、僕はそのなかで「お地蔵さまマップ」を1ページほど書かせてもらった。
新宿から上野に引っ越してきて3年、このあたりはずいぶんお地蔵さまが多いなと思って出した企画が、通ったのだ。

「お地蔵さまマップ」はイラストで構成するのだけれど、事前にラフを描いて、編集者に渡す。
しばらくして、イラストがあがってきた。レイアウトもできて、原稿を書くという段階だった。

近所を歩いているとSというライターに遭遇した。

「マグロさん、なんでここに?」
「いやいや、キミこそ。僕はこのあたりに住んでいるから」
「僕は今回、北上野の原稿を書くんで、取材してたんですよ」

とのこと。さらにSは続ける。

「お地蔵さま見つけましたよ」
「そうでしょ、このあたり多いんだよね」

と、Sはさっきそこで撮影したというお地蔵さんの写真をカメラのモニターで見せてくれた。えっ、あれ?

「これ、どこで撮ったの?」
「そこですよ」

と近くを指さす。すぐに見に行った。
住宅の前に小さな祠があり、その中にお地蔵さまがいらっしゃる。

よくというわけでもないが、ときどき通っていた裏道だ。手作り感満載の祠だ。

中をのぞいてみた。

花が飾られている。誰かがお世話をしているようだ。家はけっこう古いが新品のインターフォンがついている。
押してみるも反応はない。
その後も何度かインターフォンのボタンを押したが、反応はなかった。

しかし、先日のこと隣のご婦人が表で、鉢植えの朝顔の写真をガラケーで撮影されていた。

「きれいに咲きましたね、朝顔」

と声をかけると、

「ええ、今年は多分もう最後ですね」

10月の初旬で、僕の家の朝顔はもう終わってしまっている。

「ところで、あのお地蔵さま、名前はあるんですか?」
「さあ、名前はわからないですね」
「たまに拝んでいるんですけど、拝んでもいいんですか」
「ああ、いいんですよ。まだ奥さんがいらっしゃる頃は、きれいにしてたんですけど、いま旦那さんだけだからお世話できなくてね」
「いつごろから、お地蔵さまはいらっしゃるんですか」
「そうですねぇ。ずいぶん前からですよ、おじいちゃんのころはもうあったはずですから」

そんな話を聞き、お礼を言って立ち去った。わかったような、わからなかったような。
あ、こんなときは町中華のオヤジさんに訊こう。以前もビルの一角にあるお地蔵さんについて相談したオヤジさんだ。

「ニライタメラーメン」をいただきながら話を聞いた。
まずは、この地蔵を知っているか聞いたら、やはり知らないようだ。オヤジさんの自宅は根岸で自転車で北上野の店まで通っている。あまり自転車で通る道ではない。
この地蔵についての顛末を話してみた。

「まあね、この前も言ったけど、いろんな理由でお地蔵さんは立っているんだよ。水子で亡くなった子とか、幼い子供が交通事故で死んだとか、病気で亡くなったとか。そういう悲しいことを癒すために親が建てたりするから、拝むのはいいけど、根掘り葉掘り聞かないほうがいい場合もあるよ」

あー、なるほど。そんなこともあるのか。

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この連載について

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人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。