お地蔵さんぽ【vol.1】子どもの頃からお地蔵さまが気になっていた

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

* * *

まだ幼稚園へ行く前のことだった。
母と田舎道を歩いていると三叉路のところにいつものお地蔵さんがいらっしゃった。
いつもと少し違うのは、お地蔵さんの前には饅頭が供えられていたことだ。
僕はその饅頭が気になって仕方がなく、思わず「お饅頭は誰が食べるの?」と聞いていた。
母は「夜になったらお地蔵さんが食べるんよ」と教えてくれた。
たしかに翌日、お地蔵さんの前を通るとお饅頭はなくなっていた。
僕は、そうか、お地蔵さんが食べたんだと思った。

それが小学生になって、サンタクロースがいないことが分かったころのこと。
ふと、お地蔵さんのことが気になって、台所でお皿を洗っている母に再びお地蔵さんへ供えられたものはどうなるのか聞いてみた。
母は意外な答えをした。

「あれは、ほいとが食べるんよ」

と言う。
ほいとというのは、方言でホームレスのことだ。
さらに付け加え、母はこう説明した。

「お金とかもね、直接渡すよりゃぁ、お地蔵さんの前に置いちょったほうが、えかろう」

と言うのだ。
そうか、お地蔵さんというのは、ホームレスの人に食べ物やお金を渡すシステムなんとということがわかって、がぜん興味がわいてきた。

以来、お地蔵さんを見ると、わずかなお金などを備えるようになった。
その後、高校を出て、家を離れ、大学生、社会人になったころ、すっかりお地蔵さんのことを忘れていたのだが、新宿から上野に引っ越してきて、近所にお地蔵さんがいるのを見つけた。
ビルの一角に小さなお社が作られ、そこにお地蔵さんがいた。
お地蔵さんは胴体のところにつないだあとがあった。
興味を引いたのは、胸のあたりに1円玉が供えられているところだった。

1円玉は、最大で4枚置けるようだった。
時には100円玉が置かれていることもあれば、足元に10円玉が数枚置かれていたり、お金以外にもお菓子が供えられていることもある。

毎朝、妻の出勤時、いっしょに駅まで歩くのだが、その途中にこのお地蔵さんがある。
僕はいつもここで立ち止まり、パンパンと手を打ち拝む。
しかし、そんな僕の姿を見て、妻は「なんか違和感がある」と言う。
手をたたくのはおかしいと言うのだ。

ネットで検索してみると、なるほど地蔵さんは、地蔵尊という仏教の菩薩なのだそうだ。
そうか、手を打つのは神社で、お寺では手を打たない。
だからお地蔵さんにも手は打たないというわけだ。

いやはや、実はお地蔵さんについて、なにもわかっていないことに気がついた。
本連載を進めていくうちに、もっとお地蔵さんのことが分かればいいのだが。

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【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。