トーキョー・レガシー・ワンダーランド【vol.36】恵華@台東区松が谷

巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。
懐かしくて心惹かれる、うるわしの東京アーカイブズ。

恵華@台東区松が谷

台東区に引っ越したとき、住まいの一階に町中華があった。これが我が家から一番近い町中華だったが、2番目に近いのが松が谷の住宅街にあるこちらのお店。

初訪問は2015年6月10日。お、冷やし中華の文字が見えるぞと、入店。もう、そんな季節なのかと。
うかがった時間は午後1時半くらい。カウンターとテーブルのお店。先客少なく、テーブルに案内された。奥様がフロアでご主人が厨房なのだろうか。

いやぁ、なかなか魅力的なメニューのラインナップ。
他にも気になるメニューがあるね。しかし、初志貫徹で冷やし中華。

出てきたのがこちら。美しい。いただいてみると、これがおいしい。
もっと早く来ればよかった。
というわけで、翌日も訪問。というのも前日、メニューを見て気になったものがあったからだ。

それは、ロー麺というメニュー。フロアの奥様に聞けば、
「野菜炒めが上にのっているんですよ。タンメンだと塩味で煮こむのですが、こちらは醤油味で炒めた野菜がのっていて…、正式にはシャンサイローメンというんです」とのこと。なんだか、本格的だ。
シャンサイは炒菜だろうか。
というわけで、注文してみた。

けっこうおいしかったねぇ。これで550円。
ちなみに、こちらのお店の位置関係だけれど、スカイツリーがこんなかんじ。

その後も何度かうかがっていたのだけれど、あるときこんな貼り紙が出た。

達筆だ。
「お客様各位
本日都合に依り
お休み致します
恵華 主人敬白」
とあった。僕が見たのは2016年11月1日だが、その後、ずっとこの貼り紙がされていた。
かなりの日数がたったある日、自転車で出かける奥様を見かけて、
「すみません、あの、お店を開けるのはいつ頃になりますか?」と聞いてみた。
「ちょっと無理かもしれませんね、あれじゃぁ」
とのこと。あれじゃというのはどういうことか聞きたかったけれど、あまりつっこんではいけないと思い。
「残念です」とだけ言った。

食べログでは「掲載保留」ではなく「閉店」になっている。

そうか、閉店したんだと思ったのだが、実は建物などはずっとそのまま。2019年5月21日、雨の日にカメラを向けてみた。

前回の「大木洋食店」もそうだけれど、閉店したあとも店舗そのものはずっと残っていたりする。そのうち姿を変えるのかもしれないけれど、こういう姿を見ていると、ふとシャッターがあいて、以前のように営業してくれるんじゃないかと思ってしまう。
 
 

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当サイトにて連載中の「トーキョー・レガシー・ワンダーランド」は、ピースオブケイクの運営するサイト「note」への引っ越しすることになりました。

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この連載について

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巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
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【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。