トーキョー・レガシー・ワンダーランド【vol.22】偕来@浅草

巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。
懐かしくて心惹かれる、うるわしの東京アーカイブズ。

偕来@浅草

台東区に引っ越してきたのは2014年6月だ。
ちょうど上野と浅草の中間で引っ越してすぐは毎日のように近所を散歩し、新しい発見をした。
浅草でにおもしろい外観の店を見つけた。
ペンギンの絵が描いてある看板が印象な町中華だった。

縦に長くのびている看板には「ウマイ 安い」「スタミナ中華」とある。

場所は浅草の雷門通りに平行する「ふれあい通り」。
入り口は2つあり、それぞれに暖簾がかかっている。カウンターだけのお店だった。

ペンギンがラーメンを食べている絵がなんともかわいい。
ラーメン丼には「偕来」と店名が書かれている。
食品サンプルもいい感じ。

懐かしい昭和の町中華という雰囲気。
もう一つの置き看板には「最も 安い ぎょうざ たんめん スタミナの素」とあったので、この日はタンメンをいただくことにした。
暖簾をくぐると、先客が1人。
ちょうどお会計をするところで、スープだけを飲み、麺を残していた。
全部食べられなくてすまないと言う客。
大丈夫なのかと思った。
何が大丈夫かというと、麺はほとんど食べていないので、このお客さん具合でも悪いのかの、大丈夫なのかというものと、ひょっとしたら、この店、まずいんじゃないかという大丈夫なのかであった。
着丼。

大丈夫だった。
具だくさんで普通においしいタンメンで僕は麺は完食。
スープは半分ほど飲んだ。

2015年になって、1月いっぱいでお店を閉めるという情報を耳にした。
そこで、閉店間際の2015年1月25日にうかがった。

この日はスタミナラーメンをいただいた。
ラーメンの上にニラレバ炒めがのっかっていた。

そして、偕来は閉店してしまった。

53年間、こちらで営業していたようだ。
閉店してしまったお店も食べログにはデータが残っている。

けっきょく、なぜペンギンがラーメンを食べているのか、偕来という店名の由来など聞くことができないままお店は終わってしまった。

そのうち、建物が取り壊されて、ここはさら地になっていた。
で、今はどうなっているんだろうかと、出かけてみた。

そこはホテルになっていた。
全体像はこちら。

街そのものの風景も変わってしまったように思う。
昔は「なんじゃこの店は」というような個性的なお店が昔は多かったように思う。
そういう店がどんどんなくなっていくのは寂しい限りだ。

(続く)

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この連載について

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巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。