トーキョー・レガシー・ワンダーランド【vol.13】いもや@神保町

巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。
懐かしくて心惹かれる、うるわしの東京アーカイブズ。

* * *

いもや@神保町

前回、2000~2001年に『スタジオ・ボイス』という雑誌で1か月間同じメニューを食べるという連載をしたことを書いたが、今回も当時食べ歩いた店が今どうなっているのかを検証してみようと思う。

連載の取材がスタートしたのは、2000年9月1日だ。
考えてみれば、これから1年間、僕は日々、この連載のことを考えながら生活せざるを得なかった。
最初に選んだメニューはとんかつ。
2000年の9月に僕は毎日とんかつを食べた。

その記念すべき第一回が、こちら。

9月1日(金)
とんかつ いもや 二丁目店 神保町
とんかつ定食 700円

いもやの外観は当時と今はまったく変わっていない。
この日の日記が残っているので、掲載しておこう。

9月1日 金曜日
午後2時起床。
きょうも暑い。
日記を書いて、市ヶ谷の鉄人社まで出かける。
いよいよ本日よりとんかつを毎日食べるので、市ヶ谷でとんかつ屋を探したが、これがない。
市ヶ谷にとんかつ屋がないのだ。
鉄人社の編集者たちにおいしいとんかつ屋を聞く。
目黒の「とんき」や神保町の「いもや」の名前が出る。
そうだ、「いもや」だ。
「いもや」というのは神保町にたしか3軒あって、天ぷら、天丼、とんかつの店だった。
そもそも僕はとんかつはあまり好きではない。
あの脂身がダメなのだ。
だからいつも食べるのはヒレカツ。
しかし、とんかつの王道はロースカツだろう。
とにかく神保町まで行く。
あった、あった。
昔と変わらず「とんかつ」の暖簾が風になびいている。
700円である。
カウンターだけのこの店は肉に衣をつけてあげている様子が良く見える。
迷わず「とんかつ」を注文する。
おしんこは別。
味噌汁はシジミ。
かりっとあがった香ばしいかおりである。
安さでいうとここがいちばんのような気がする。
デジカメで写真を撮って、食べる。
さすがに脂身はちょっと苦手。

水道橋の駅まで歩く途中、理容店のチラシを配っていたので、配っている人に場所を聞いて入る。
伸びてきた坊主頭を刈ってもらう。

セブンイレブンであれこれ買って帰宅。
バウスターンの原稿タイトルを送信。
少し横になる。

別の仕事でとんかつ以外にもカップヌードルも毎日食べなくてはならない。
尾道中華そばを食べる。
背脂コクしょうゆ味。
おにぎりと一緒に食べる。
おいしい。

明け方眠る。

この日食べた「とんかつ定食」700円がこちら。

さて、いまのいもやがどうなっているか、行ってみた。
お昼時だと行列ができているかもしれないので、1時半くらい。
って、すごいことになっていた。

行列ができている。
しかも、長い。
なんだろう。
近づけば、こんな貼り紙。

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えっ、ウソ。
閉店するんだ。
まいった。

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この連載について

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巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。