トーキョー・レガシー・ワンダーランド【vol.7】かんだやぶそば

巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。
懐かしくて心惹かれる、うるわしの東京アーカイブズ。

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かんだやぶそば

2008年1月25日(金曜日)、オールアバウトの散歩記事を書くために正午に担当のEくんとJR御茶ノ水駅で待ち合わせをした。

神田~上野、粋に江戸建築散歩 (全文) [散歩] All About

まずは、神田明神へ行き、そこから「かんだやぶそば」をめざす。
昌平橋で神田川を渡り、神田郵便局の脇の道を入っていくと「かんだやぶそば」があった。

創業は1880年(明治13年)、この建物は1923年(大正12年)、関東大震災後に建てられた。
当時はこの行灯(あんどん)が夜、目印になったんだね。

ところが、事前に定休日を調べて行ったのだけれど、この日は臨時休業していた。

「一月二十一日(月)~二十五日(金)まで都合により休業させていただきます」という貼り紙があった。写真を撮っている間、それとは知らずにやってくるお客さんがけっこういた。
老夫婦の夫人が「もう、あんたと来るといつもこうだから」と怒っている。別に旦那さんのせいというわけじゃないだろうに。
僕たちは、この日、近くにある「神田まつや」へうかがった。こちらも創業は1884年(明治17年)とかなりの老舗だ。

しかし、僕の心は「かんだやぶそば」に残った。で、たまらず、すぐに訪問することになった。
2008年2月5日(月曜日)のお昼にやってきたのだ。この日、行っておいてよかった。
前回訪問時、上に紙が貼られていたので見えなかった看板が、この日はきちんと見えている。

ところが、その後、「かんだやぶそば」は火事にみまわれた。2013年の2月29日のことだ。屋根裏の漏電が原因だそうだ。そして、火災から1年7か月ぶり、2014年10月に再開を果たした。

ずっと行こうと思いながら、行けなかったが、2017年6月20日、別の仕事で近所を通りかかったので、カメラを向けてみた。

かつての門があった場所はこちら。行灯の場所は同じ。門は右にずれている。まだ、営業時間前なので、門は閉ざされているが、かつての看板などは焼けなかったのか、同じものが掲げられている。

店は違和感なく街に溶け込んでいる。

この界隈は東京でも独特の地域で、古い建物がけっこう残っている。第二次世界大戦のときに空襲で焼けなかったのだ。
「かんだやぶそば」もそんな建物のひとつだった。
先に紹介した、「神田まつや」も空襲被害を受けなかった建物にひとつだが、他の建物を紹介しておこう。

こちらは、あんこう鍋で有名な「いせ源」さん。1923年(大正12年)の関東大震災で当時の建物は全焼し、1930年(昭和5年)に建てなおしたものだ。

外から見るだけでもいいが、ぜひお店に入ってみてほしい。

こちらは、甘味処の「竹むら」さん。建物は1930年(昭和5年)の創業時に建てられた。木造三階建ての建物は、東京都選定歴史的建造物に指定されている。

撮影したのは「かんだやぶそば」と同様に2017年6月20日。

さて、この地域がなぜ空襲被害を免れたのか。諸説あるのだが、御茶ノ水駅からすぐの場所にある、ニコライ聖堂は空から見ると十字に見えて、そこは空襲してはいけないとのことで、そこから近いこの一帯には爆弾が落とされなかったというもの。
また、爆弾は落ちたのだという説もある。ただ、落ちた爆弾は不発弾で、焼けなかったという説。

そんなことを考えながら、この一帯を歩くのも楽しいものだ。

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この連載について

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巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
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【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。