トーキョー・レガシー・ワンダーランド【vol.2】大勝軒旧店舗跡地@豊島区東池袋

巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。

* * *

フェチ系などの記事が中心に仕事をしてきたのだけれど、2005年にオールアバウトというWEBサイトで、散歩ガイドとになったことで、徐々に散歩の仕事が多くなってきた。最近ではフェチ系の原稿の依頼はほとんどなく、街歩き、食べ歩き系の原稿依頼がほとんどだ。

当初、散歩にはオールアバウトのプロデューサーのNくんが同行してくれた。記事に使う写真はすべて彼が撮ってくれたからだ。そのため僕は一応デジカメは持っていくのだが、メモ程度に撮影するだけだった。

それが2007年くらいまで続いたのだが、プロデューサーがEくんという若者に交代して以降、写真はすべて僕が撮影するようになった。このEくんは、とにかくラーメンが好きで、散歩のときには必ずラーメン店寄った。

彼が推薦するお店はどこもおいしく、それまでラーメンにさほど興味はなかったが個人的にも食べ歩きをするようになっていた。そんなEくんから、閉店する東池袋大勝軒へ行こうと誘われた。僕もテレビで閉店のニュースを見たので、大いに盛り上がった。うかがったのが忘れもしない2006年12月25日。

実際の記事がこちら。

東池袋大勝軒といえば、つけ麺の生みの親ともいわれる山岸一雄氏が1961年昭和36年に創業したお店だ。閉店予定の2007年3月20日が近づくにつれ、多くの人が店を取り囲むように行列が作られた。我々がうかがった2006年12月25日は、まだそんなに加熱はしていなかったが、朝10時に到着するすでに6人が店の前に並んでいた。

それにしても年季の入った建物だ。
この一帯は再開発でタワーマンションが建てられるようだった。

しかし、この店のたたずまい、味があるねぇ。

大勝軒の「特製もりそば」650円をいただく。
おいしい しかし、麺の量が多いね。腹がパンパンだ。

食べログにはお店情報が残っている。

以前は、店名が大勝軒池袋店だったんだね。
住所は豊島区東池袋4-28-3となっている。

オールアバウトのNくんは大学時代によく通っていたそうだ。昔から行列の絶えないお店だったとのこと。
食べ終えて外に出たら、行列に並ぶ人数はさらに増えていた。

道を挟んだこちらのアパートもたぶん取り壊しになるのだろう。

そして、惜しまれつつ東池袋大勝軒は閉店した。しかし、なんとうれしいことに翌2008年1月5日に旧店舗近くで復活する。さっそくうかがって、記事にさせてもらった。

当時はまだご存命だった山岸一雄さんがお店の入り口に座っていらっしゃった。名刺を渡し、お写真を撮らせていただき、少しお話をうかがう。ああ、なるほど、大勝軒というのは、味もさることながらこの方のお人柄も魅力のひとつだなと思った。とにかくニコニコされて、急な取材のお願いでも嫌な顔ひとつせずに答えてくださった。
そんな山岸さんは2015年4月日に鬼籍に入られた。

食べログのサイトはこちら。

店名が「東池袋 大勝軒 本店」になっている。
ちなみに住所は南池袋だ。

この原稿を書いていると、久しぶりに大勝軒へ行きたくなった。跡地のビルの画像を探してみたが、きちんと撮影できているものがない。なので、それも撮りに行こうと家を出た。

高速道路の下にあるお店。

相変わらずの外観だ。お昼時を過ぎていたので、行列はなかったが、それでもひっきりなしにお客さんがやってくる。
いただいたのは「もりそば 小」700円。昔は、普通盛りを食べていたが、さすがに今も自分には多すぎる。小がちょうどいいのだ。

なんだかおいしくなったような気がする。

さて、こちらが、旧店舗があった場所に建ったビル。アウルタワーだ。改めて見上げると高いビルだ。

下のところへ行ってみよう。

たぶん、東池袋大勝軒の旧店舗は、この先にあったのではないかと思われる。

もはや、かつての面影などは一切ない。

タワーマンションなど、大型のビルが建つ場合は、建物だけではなく、路地などもすべてなくなってしまう。思い出そうとしてもその痕跡さえもすべてなくなってしまうので、容易ではない。

暑い日だった。撮影もそこそこに僕は汗をかきかき池袋駅へ向かった。

BACK  NEXT

【引っ越しのお知らせ】
当サイトにて連載中の「トーキョー・レガシー・ワンダーランド」は、ピースオブケイクの運営するサイト「note」への引っ越しすることになりました。

全話が見られるのはnoteだけで、当サイトでの掲載はピックアップとして1~5話と直近の5話の掲載を予定しております。
引き続いてのご愛読、よろしくお願いいたします!

この連載について

初回を読む
巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。