多田文明の「あやしい話」に乗ってみましたルポ【vol.2】潜入ルポのリスク

 悪徳業者にとっての騙されやすい人とは、まず自分たちの話の腰をおらずに素直に聞いているかである。
 そこで私は横柄な態度を取らず、従順な姿勢をとるように努める。
 私を狩ろうとする狼たちに対して、私自身をいかに従順な羊に見せるかにいつも腐心している。

 私が受け身な姿勢で話を聞く理由にはもう一つある。
 それは、勧誘業者がすべて悪徳であるとは限らないことだ。
 私はできるだけ、相手が悪徳業者だと思い込んで対応しないように努めている。
 最初は、相手が良い業者だと本気で信じ切って話を聞く。
 終盤まで話を聞いて、相手が悪徳業者と判断すれば、反論する。
 しかしながら、時にあまりにも狡猾な手口を使うために、本気で騙されてしまうこともあり、潜入ルポには、こうした危険な側面がいつもつきまとっている。

 私のような羊のような従順な態度に接しても、真摯な対応をする業者もいる。
 むろん、そういうところの内容は記事にはしない。
 しかしながら残念なことに、多くの業者が私をカモと見るや、ひどい騙しの言葉を並べて、一気に高額な商品サービスの契約をさせようとしてくる。

 これから紹介していく業者は、私を羊とみるや、一気に刃を向けてきたものたちの記録でもある。
 悪徳業者は私を罠にかけたつもりであろうが、勧誘実態を書かれることで、逆に私にハメられてしまったというわけである。

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【著者】
多田文明(ただ・ふみあき)
ルポライター、キャッチセールス評論家、悪質商法コラムニスト。
1965年北海道生まれ。日本大学法学部卒。雑誌「ダ・カーポ」にて「誘われてフラフラ」の連載を担当。2週間に1度は勧誘されるという経験を生かしてキャッチセールス評論家になる。これまでに街頭からのキャッチセールス、アポイントメントセールなどの潜入は100ヵ所以上。キャッチセールスのみならず、詐欺・悪質商法、ネットを通じたサイドビジネスに精通する。
著書『ついていったら、こうなった』『なぜ、詐欺師の話に耳を傾けてしまうのか?』(以上、彩図社)、『クリックしたら、こうなった』(メディアファクトリー)、『崖っぷち「自己啓発修行」突撃記』(中公新書ラクレ)、『ついていったら、だまされる』(イースト・プレス)など。
電子書籍『悪徳商法ハメさせ記 新興詐欺との飽くなき闘争』『人を操るブラック心理術 「Yes」と言わせる交渉の鉄則32』など。

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